【インタビュー】「好き」の継続が新しい世界を開く│Tableau Public Ambassador さかぴーさん

JTUGコンテンツマーケティングチームのyudy (@udviz) です。皆さんはTableau Ambassador(タブローアンバサダー)をご存じですか?2021年9月に、Tableau Ambassador 2021 が発表されました。2021年は国内在住の日本人としては過去最多の10名が選出されるなど、盛り上がりをみせています。

しかし、多くの人にとっては

「Tableau Ambassadorって何者…?」

「Tableau界隈のなんかすごい人たち、ってことは何となくわかるけど…」

といった印象かもしれません。

Tableau Ambassadorを簡単に言うと、「Tableauの素晴らしさをさまざまな方法で多くの人に広めている人たち」のことです。今回は、そんなTableau Ambassadorの一人、Tableau Public AmbassadorのSakai Yutaさん(以下、さかぴーさん)にお話をうかがいました。

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ーー本日は、Tableau Public Ambassadorのさかぴーさん (@unbosoms) に、Tableau Publicにおける活動や、秀麗なVizづくりのための情報収集方法など、お話をうかがいます。あらためましてさかぴーさん、2020年に引き続いてのTableau Public Ambassador就任、おめでとうございます!

さかぴー:
ありがとうございます!本日はよろしくお願いします。

ーーまずは、簡単な自己紹介をお願いできますか?

さかぴー:
Sakai Yutaと申します。Twitterなどでは「さかぴー」の名前で活動しています。

NTT西日本に勤務しています。いまは法人向けのデータ活用・DX関連組織に所属しており、Tableauの支援や営業活動などをおこなっています。

Tableauは2016年ごろから使っているので、2021年現在、使用歴は5年超になりました。

ーー2016年当時、Tableauを使い始めたきっかけは何だったのでしょう?

さかぴー:
業務がきっかけです。NTT西日本はフレッツ光というインターネットサービスを提供しているのですが、2016年当時、私はフレッツ光のネットワークアーキテクチャを考える部署に所属していました。そこで通信の分析に携わっていたんです。

さまざまな分析装置やツールを検討・導入する中で、ベンダーさんから「Tableauっていうツールがあるんですよ」とご紹介いただき、「こんなツールがあるんですねぇ」と。

このときがTableauとの最初の出会いでした。

ーー業務の中でTableauと出会い、現在のようなTableau Publicを中心とした活動(MakeoverMondayやWorkoutWednesday)をおこなうようになるきっかけは何だったのでしょう?

さかぴー:
転機はKTさんが開催していたDATA Saber Boot Campです。私は2018年12月にこのプログラムを卒業しました。

2018年当時、「Tableauのスキルアップと利用推進を進められる人材を作ろう」という流れが社内にあり、タイミングよくプログラムに参加させてもらったんです。

そのときに初めて、Tableauコミュニティの存在を知りましたし、MakeoverMondayなど世界的なプログラムのことも知りました。当時のプログラムでは、1-2週間ごとに講義が開催されていたのですが、講義のたびに何らかのコミュニティ活動に取り組んでいました。

プログラムを卒業したあとも、MakeoverMondayのような活動は継続していきたいなと思い、現在に至ります。

ーーDATA Saberプログラムや国内外のコミュニティに出会ったことが、組織の枠を超えた活動に変化したひとつの要因なんですね。

さかぴー:
本当に衝撃でした。コミュニティに出会う前は、業務目的でしかTableauを使ってこなかったので、平たく言うと「固い使い方」をしていました。

でも、海外の方が公開しているVizを見ると、とっても「自由な使い方」だなって思ったんです。同じツールでもこんなにも遊び心に満ちた使い方ができるのかって。世界が開けた瞬間でした。

ーー確かに、こんなにも多様な表現ができるのか!と思いますよね。どうやって作っているんだろう、と興味関心や創作意欲を掻き立てられる気持ちは、とてもよく分かります。一方で、アウトプットを継続するにはエネルギーが必要なのではないでしょうか?さかぴーさんがデザイン性の高いアウトプットをし続ける背景やモチベーションの源泉について教えてもらえませんか?

さかぴー:
実は、Tableauに触れる前からデザインが好きでした。

高校生の時の話なんですが、当時部活動で高校のホームページを作るなどしていました。そこでホームページづくりに出会い、Webデザインにハマったんです。

その後、大学で所属していた研究室にWebデザインがめちゃくちゃ得意な先輩がいて。その方からいろいろと教えてもらったり、その頃はデザインブログを読み漁ったりもしていましたね。

一時期、社会人の音楽団体に所属していたときは、団体のWebサイトの改修に携わらせてもらったこともありました。それくらい、デザインに対する想いはずっと抱き続けていたんです。とは言え、仕事ではデザイン関連の業務をすることもなく月日が流れていきました。

そんなとき、Tableauに出会って、コミュニティに出会って。特にMakeoverMondayはまさにデザインの世界だったので自分にはピッタリでした。繰り返しになりますが、とにかくデザインが好きだった、これが1番の要因ですね。

次にインプットについてですが、先ほどお伝えしたように従来からデザイン関連のインプットはしていました。Tableauと出会ってからはインプット量がさらに増えたように感じます。

Tableauの場合、Tableau Publicに多くのVizが公開されています。それらも重要なインプット源です。他の方が作ったVizからインスピレーションを得たり、こんなVizを作ってみたいという憧れを抱いたり。見ているうちに「次に作ってみたいVizリスト」が積み上がっていくんです笑。

MakeoverMondayに取り組む中で、「今回のデータセットだと、あの表現がハマりそうだな」と考えて試みるんです。でも、完璧にハマるものはもちろんなく。そこから微調整を重ねていくんですけど、そのプロセスがとても楽しくて。

そうした試行錯誤の結果としてVizが完成するのですが、「できたこと」自体がそもそも楽しく嬉しく、モチベーションにつながっています。

ーーできたことが楽しい、嬉しい、という気持ちがモチベーションになるのは本当にそうだなと思います。なんと言うか、根源的な欲求が満たされというか笑。他の方のVizを見てインスピレーションを得ているというお話がありました。ほかの媒体からのインプットでおすすめの方法があれば、ぜひ教えていただきたいです。

さかぴー:
そうですね、ほかの手段としては、最近だとPinterestからインプットを得られる仕組みを作っています。

Pinterestで「インフォグラフィック」と検索した結果を、iPhoneのウィジェットに表示するようにしているんです。毎回違うインフォグラフィックが表示されるので、気に入ったものや真似したいものは保存するようにしています。

さかぴー:
最近はPinterestで見たものをTableauで再現してみよう試みることが増えました。もともとTableauで作られていないのでハードルが高い表現もあるんですが、それもひとつのチャレンジかなって。

ーーところで、デザイン性の高いVizと業務系Vizの間に隔たりがあるように感じる人は少なくないのでは?と思います。前者に取り組むことが、後者に対してプラスの意味を持つのでしょうか?

さかぴー:
もちろん、MakeoverMondayで作ってきたようなデザイン性の高いVizを業務で作ることはまずありません笑。

でも、広い意味での「デザイン」を意識することは、業務系Vizにとても役立ちます。

私の場合、DATA SaberプログラムでPreattentive Attributeなどの考え方に触れ、「見せ方にもテクニック・技術が必要」だと知ったのですが、その前後でアウトプットがかなり変わりました。テクニックのひとつひとつは細かいものでも、それらの効果は大きいと思いますね。

デザインにこだわったVizを作るときって、同時にたくさんのことを意識していると思います。たとえば、MakeoverMondayの場合は、「見てくれる人に楽しんでもらうためには?」なども考えるでしょう。これって、業務にも通じる話なんです。方向性は違っていても、伝えたいことを具現化するために動員している知識や技術って実は同じなんですよね。なので、デザイン性の高いVizづくりはいい訓練になっていますし、結果的に業務に生きていると感じます。 

ーー両者はそれぞれ独立した存在ではなく、互いに影響しあえるものなんですね。
ここからは、Vizに関するお話をもう少し深掘りさせてください。さかぴーさんはTableau Publicに200個以上のVizをアップしていますが、印象に残っているVizやイチオシのVizはありますか?こだわりポイントもお聞かせいただければ幸いです。

さかぴー:
やっぱり”Sleeping Habits” ですね。

Iron Questで「自分に関するデータを可視化しよう」というお題に対して作ったVizなんです。

当時はMakeoverMondayばかりやっていたんですが、手元のApplewatchで取得していた睡眠データがあったので、これはチャレンジしてみるしかないと。

「とにかく最高にかっこいいものを作ろう!」という一心で取り組みました。

時系列データなのでradialな表現は絶対にかっこいい、という確信はありました。最初は、睡眠時間の長さを円の大きさで表現すれば、星空みたいになって素敵なはずだとか、そんなことを思いながら作ってみたものの全然かっこよくならなくて笑。

線グラフの方が良さそうだ、シグモイド関数を使うと滑らかさが出せるな、睡眠時間の長さはダンベルチャートで表現するとわかりやすそうだ、などいろいろな試行錯誤を重ねました。

取得していたデータにも恵まれました。新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を受け、2020年4月から生活ががらっと変わりました。その変化のタイミングを、チャートにおける水平線に置くことで、生活変化に伴う睡眠時間の変化をきれいに表現できることに気付いたんです。表現したいことがカチッとハマった瞬間でした。

自画自賛ですが、こんなにも良くできたVizはなかなかないなって、いまでも思っています。

ーー私自身、このVizには深い感銘を受けたことを覚えています。いま、細部へのこだわりを聞いて、新たな発見だらけでした。作者本人からの解説って本当にいいものですね。ガイドを聴きながら美術品を鑑賞しているような感覚です。

さかぴー:
笑。ありがとうございます、一番のお気に入りなので嬉しいです。

他にも地味ながらこだわったVizはいくつもあって、ご紹介してもいいですか?

ーーもちろんです。いくつでもどうぞ!

さかぴー:
デザインにこだわったVizと、インタラクティビティにこだわったVizに大別されるんですが、後者を頑張ったVizを次にご紹介します。

“World Happiness Report 2020” というVizなんですが、「こんな操作感を具現化したい!」という思いに突き動かされて完成させました。

62位の日本を中心に前後20か国が表示されている

世界の幸福度ランキングに関するデータセットだったのですが、登場する国の数が多く、適当な数への絞り込みが個人的課題でした。表現に悩んだ結果、画面左側に幸福度上位国から下位国の順に並べることにしました。

チャートをクリックしたり、プルダウンメニューを切り替えることで、特定の国を選択できます。このとき、選択された国がハイライトされるようにしたり、表計算を使いながら順位が前後の国を表示できるようにしたりとこだわりました。

特に後者は、単純に前後10か国を表示するのではなく、たとえば上位10位以上なら上位20か国 / 下位10位以下なら下位20か国を表示するといった条件分岐をしている点も細かいこだわりポイントです。

たとえば5位のノルウェーを選択すると、上位20か国が表示される仕様だ

ーーこのVizもまた素敵ですね。こういったインタラクティビティは業務Vizにも活かせそうですし、検索性の高さやハイライトなどちょっとした心配りも見る側にとっては嬉しいポイントですね。インタラクティビティにこだわったVizは、デザインにこだわったVizと違ってパッと見で分かるわけではないので、ぜひ実際に触ってみてほしいです。

さかぴー:
手前味噌ですが、すごく頑張って計算して作ったので、ぜひこのインタラクティビティを体感していただきたいです!

ーーインタラクティビティといえば、私が好きなVizがありまして…「都道府県章クイズ」なんですが、あれは触った人の好奇心を刺激するつくりで印象に残っています。

さかぴー:
こちらですね。

ふと思い付いて作ったVizです。とても楽しかったですね。出題順や選択肢をランダムに表示するつくりに仕上げたのですが、作るのが地味に難しいんです。皆さんにも、ぜひチャレンジしてもらいたいですね。

ーーこのViz、出題方式もさることながら、動作の軽快さやスマホからの操作しやすさも楽しいポイントのように思えます。

さかぴー:
そうですね。うまくできて良かったなって思いますね。

このVizは、何度か妻に触ってもらってフィードバックをもらいながら改良を重ねました。「ここを押すんだ、それは気づかなかったなー」なんて言われながら笑。

そういうフィードバックがなかったら今の形にはならなかったと思います。最初は3択クイズじゃなくて47択クイズでしたし笑。

ーーさすがに解けないですね笑。

さかぴー:
ですね笑。それ以外にも、UIのデザインには力を注ぎました。自然に触ってみたくなるように作りたかったので。Tableauでもこんなことができるんだぞ!という気持ちでしたね。

ーー今回、Tableau Public Ambassadorとして2年目ですが、過去1年の振り返りや向こう1年の展望をお聞かせいただけますか?

さかぴー:
2020年にAmbassadorに選んでいただいたときは、MakeoverMondayを毎週やっていました。その継続性が評価された結果だと思って、その後の1年もアウトプットを続けてきました。

2021年も選出してもらったからには、作って公開し続けるだけではなく、ノウハウの発信にも取り組んでいきたいです。2021年JTUG冬の総会で、Tableau Tip Campus! の講師として出演させていただきましたが、こういう場にお声がけいただけるのはとても嬉しいです。

▼Tableau Tip Campus! にさかぴーさんが登壇!
動画(YouTube):“Public映え”のための7つのテクニック#2021JTUG冬の総会

さかぴー:
Twitterなどでも、多くの人がVizを公開するようになってきているものの、「すごいViz」の制作意図や細部へのこだわりってあまり紐解かれていないような気がしています。今後、何らかの手段でそういったノウハウの発信をしていきたいですし、それが誰かの役に立てるなら嬉しいことだなって。 

ーーその取り組み、めちゃくちゃニーズあると思います!少なくとも私は見ます笑。コメントいただいたTableau Tip Campus! は、さかぴーさんはじめ、講師陣が豪華ですよね。上級者がどんなことを考えて、どんなアウトプットにつなげているのか、知れる機会はとても貴重なので、期待しています!そろそろお時間も差し迫ってきました。最後に一言いただけますか?

さかぴー:
今日インタビューを受けていて、頭に浮かんだエピソードをお話させてください。DATA Saberの弟子が「卒業」するときに、2018年から現在にかけて私が作ってきたVizの変遷を紹介したんです。

自分の過去Vizって、あらためて見るとおもしろいですよね。DATA Saber挑戦中のころは、すべてのデータを説明し尽くしたい気持ちが先行して、細部への意識が疎かになっていました。Vizにタイトルを書かず、Evaさんから「これは何のデータなの?」とコメントをもらったり笑。ただひたすら学んだ知識を総動員していた記憶があります。

そんな中で、半年ほど継続してアウトプットを作り続けていると少しずつこなれてきて、デザイン要素を盛り込んだり細部まで意識するようになりました。

その後、1年経過した頃には「かっこいいViz」に関する考え方が自分の中で確立されてきて、Vizが洗練されてきました。

最近では、技術的にレベルが高い、普通のやり方では作れない作品を作ってみようと考えるに至りました。その結果が、今日話題に挙げた “Sleeping Habits”です。

以上のようなお話を弟子にしたのですが、一連の話で伝えたかったのは「継続は大事!」ということなんです。Tableauではなくても、自分の好きなことや打ち込めることには時間をかけてほしいなと。今は不足してるスキルが気になったりするかもしれないけれど、成果はかけた時間に付いてきますし、時間は継続によって積み重ねられるからです。

好きだと思ったら続けてみてください。きっと世界が開けますよ。

▼さかぴーさんが講師としてTipsを解説!
動画(YouTube):“Public映え”のための7つのテクニック#2021JTUG冬の総会
資料(Speaker Deck):Public映えのための7つのテクニック

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